固有で堅固な、この上なくクリスタル

2022.8.22 VOGUE KOREAインタビュー
https://www.vogue.co.kr/2022/08/22/고유하고-견고한-더없이-크리스탈/

英国、午後、庭園、邸宅…この上なく丁重なクリスタル。

クリスタルは大衆に近寄るより彼らを自身に引き寄せる。それでもいいのは、彼がどうしても目に付くしかないからだ。

人間は誰しも少しは演じながら暮らす。志向と実在の間の間隔、それを埋めようとする欲望の大きさは彼が被る帽子のようで隠そうとしても隠せない。どうしようもないとしても、その全てのあがきが疲れる時がある。だから一種の飾り気から抜け出し流れる水のように生きる人達、自然に自分として存在する人に会うと嬉しい。私たちがこの人を好きということは、だからではないだろうか。

クリスタルはデビュー当初からそうだった。内向的で人見知りな性格を努めて隠すことなく、愛情を渇望して大衆に媚びることもなかった。だから'冷たい'と誤解を受けたが、彼をずっと見守ったファン達は彼の親切さと気さくさを知っている。やりとりの量が重要になった時代だが、彼は言葉の多さで記憶されるスターではない。きらびやかな言葉でインタビューを楽にさせてくれる締切界の大物でもなく、アイドルではあるがバラエティ番組にもよく出演し、所謂'ダメな'フリをして大衆を楽しませるスタイルでもない。質問のための質問に、知らないフリをして調子を合わせる代わりに照れ笑いで答える人、'成功のためなら出来ないことはない'という雰囲気を漂わせる代わりに!与えられた状況に最善を尽くす人、努めて自分を飾らないが内実は健康で正直さだけでいっぱいな人、それがクリスタルのイメージだった。このようなイメージも似合う人がいて、そうでない人がいるだろうが、クリスタルのオーラはそれで完成した。

f(x)として活動した時期、クリスタルは清純・セクシーに両分されたK POPアイドルの女性像に新しいキャラクターを自ら追加した。カリスマのある風貌と強い目つき、当時では珍しい腹筋の組み合わせは当然目につくもので、女性ファン達の熱狂を呼び起こした。ここに幼年期の海外生活を始めとした多様な経験から滲み出る洗練された感覚、トップスター姉妹のうち愛された妹であるという背景、特有の何気ない性格が結合して彼の気品高いイメージが完成された。彼がラルフローレンのアンバサダーとして長く活動したことは当然のことであった。単純だが彼の中にある強いキャラクターが視線をつかみ、古典的な気品とモダンが共存するというのは、それ自体がクリスタルの個性でもあるから。

'自分に一番似合うと思うものを着るのが最高!個人的にはトレンディーなファッションよりもクラシックなものが沢山欲しいです。10年経っても着られるもの。私が思う私のファッションアイコンは、ブリジット・バルドー、シャルロット・カシラギ、ジャクリーン・ケネディ=オナシス、キャロリン・ベセット=ケネディなど沢山います。実際に身近でインスピレーションを受けるのは母、父です。若い頃の両親の写真を見ると今すぐ着たいと思うほどかっこいいです。'

活動名にチョン・スジョンを追加して本格的に演技を始めてから、彼は新人に戻ったかのように役の大小に拘らず消化した。〈ハベクの新婦2017〉の華やかな女神ムラは固有のクールな美女のイメージを完璧に活用した作品だった。〈刑務所のルールブック〉の辛い恋をするジホは、彼を見る広い視聴者層に本格的な俳優として印象付ける役だった。その後〈プレイヤー〉の路地裏ドライバー、〈サーチ〉の決断力にあふれる軍人、環境を克服しようと頑張る〈 警察授業〉の意固地なガンヒ、初ロマンスコメディ〈クレイジーラブ〉の突飛なシナ、映画〈父親叫喚〉の非婚母トイル、〈甘酸っぱい〉の澄ました契約社員ボヨンまで、彼は作品や配役の規模を離れて'私にとって新しいか、私が出来るか'を基準にキャラクターを選択してきた。アイドルのクリスタルが難しい振りを簡単に踊るかのように見える人だったように、俳優チョン・スジョンは奥深い苦悩や動揺もなく自身に与えられる変化を淡々とやりこなす人のように見える。そうやってゆっくり、でも確実に、彼は俳優として足元を固めてきた。

最近チョン・スジョンはキャリアのまた違う転換点になる作品のひとつを終えた。キム・ジウン監督が演出しソン・ガンホ、イム・スジョン、オ・ジョンセ、ジョン・ヨビンが共に出演する〈蜘蛛の家〉だ。〈蜘蛛の家〉はチョン・スジョン の初メジャー産業映画になる。'(そういう事に)意味付けする方ではないけれど、初のメジャー映画が〈蜘蛛の家〉であることに意味が無いわけはないでしょう。現場の雰囲気が期待以上とても良くて、本当に楽しく撮影して、上手くやらなければという思いだけでした。イム・スジョンオンニとキム・ジウン監督は以前1、2度お会いしたことがあります。プライベートではない現場で一緒に作業できるということ自体がワクワクして本当に不思議でした。ソン・ガンホ先輩を含め、全ての俳優と共にできて光栄でしたし本当に良かったです。私がマンネだったので皆さんが私を沢山助けてリードしてくれて有り難かったです。'

〈蜘蛛の家〉の背景は1970年代だ。'全て撮り終わった映画〈蜘蛛の家〉の結末をもう一度撮るならもっと良くなるだろうという強迫に陥る監督(ソン・ガンホ)が検閲当局の妨害と変わった内容を理解できない俳優と製作者など、狂う一歩寸前の悪条件でも撮影を強行しながら繰り広げられる、壮絶で面白いのに悲しいことを描いたブラックコメディーだ。彼が生きていない1970年代をチョン・スジョン はどのように想像しているだろうか。'自由さが思い浮かびます。全てが一番自由だった'Decade'だったと聞きました。芸術的にも自由に多くのものを表現できた時代。その時代の映画、モデル、俳優、音楽、スタイルなど好きなものがとても多いのですが…いくつか選ぶならアメリカの〈Soul Train〉ショー、イタリア映画のポスターやサウンドトラックアルバムがとても好きです。そこに戻れるならその時代の俳優になりたいです。'

彼にとって〈蜘蛛の家〉はかなり楽しい作業だったようだ。チョン・スジョン は劇中で人気急上昇中の新人俳優として出演した。〈蜘蛛の家〉は白黒とカラーが一つのフレームに収められる独特な形式の映画として知られる。1970年代の俳優として分解白黒フレームに収まるチョン・スジョンだなんて、キャスティングがこれ以上に適切であることはない。彼には確実にクラシックな俳優のようなドラマティックなイメージがあった。

自身を表す趣味もなく、ナルシシズムとも程遠い彼はまだ画面に出る自身を見るのがぎこちない。好きな映画を何回も見るタイプでも、自身の作品はそのまま見ることができない。'気まずいです。知り合いとTVを見るときチャンネルを回して私が出るとリモコンを奪うか逃げるかします。'画面に出る自身がどれだけ美しいか、彼は今の自身から遠ざかった後年になって知る事になるだろう。

続けてドラマと映画の撮影、ファッションブランドの出張を終えたチョン・スジョンは現在LAで休息をとっている。'毎年秋になると私たち姉妹の伝統のようにスキーをした後、保養地へ旅行をします。例えばストーからバハマ、ベールからロス・カボスコースでした。でも最近数年間はコロナと仕事で行けませんでした。早くまた行きたいです。'スキーをする代わりに今回の旅行では料理をして音楽を聴きながら平和な日々を送る。'配達を頼んだり外食を多くしましたが最近はただ簡単なものでも家で作って食べるのが好きなんです。大層なものではありませんが最近はパスタ、キムチチゲ、キムチジョンなどを作りました。最近ハマっている音楽は、フリートウッド・マック(Fleetwood Mac)の'Dreams'。私のプレイリストにいつも入っている曲なんですが、最近また毎日聴いています。いつ聴いても気分が良くなる曲です。'

最後に彼にとって28がどんな意味か尋ねた。ファン達であれば充分に予想可能な、あまりにもチョン・スジョンらしい答えが返ってきた。奇抜な答えでないため拍子抜けするかというと、そうではない。これがまさに私たちが愛するチョン・スジョンだから。

'私には訪れないような数字でありながらも、いつも待ち望んでいた歳。特別な意味は無いと思います。私が人生のどんな段階にいるかは本人が判断するよりも人が決めてくれるようです。私はただいつも与えられた状況に最善を尽くして、これからもそうします。'

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